個別の仮想通貨やトークンがそれぞれどんなプロジェクトなのかを調べて投資するのは、株式の個別銘柄を調べるのと似た部分もありますが、定型の開示フォーマットや、比較しやすい数値指標が無いので難しいものです。
しかもほとんどの情報は英語です。
そこで、暗号資産(仮想通貨・トークン)に投資するにあたって、いったいどんな項目を評価して投資判断を下したらいいのか考えてみました。
まず前提として投資は利益をあげるために行うものなので、
「その暗号資産は投資対象として魅力的か?(値上がりするのか?)」
というイシューに答え得る枠組み(論点)を考えます。
この枠組みを考えておくことで、英語のホワイトペーパーを隅から隅まで読み込むのではなく、必要な情報を絞って情報収集をすることができます。
需給のバランス
株式にしても暗号資産にしても、売りを上回る買いがあることが価格を直接押し上げる唯一の要因です。
そのため値上がりを期待する時には需要(買い)と供給(売り)のバランスを見る必要があります。
時価総額
時価総額 = 価格 × 発行済枚数
コインマーケットキャップにリストされているものはここで確認できます。
時価総額が大きい暗号資産はそれだけ上昇に必要な金額が大きくなるので、必然的に上値の限界点が見えてきます。
例えば、どれだけ魅力的なプロジェクトだとしても、既にビットコインくらいの時価総額が付いていたとすれば、そこから更なる値上がりを期待することはあまり現実的ではありません。
バーンと新規発行
株式で言うところの自社株買いと新株発行です。
バーン(Burn=焼却)とはプロジェクトから得た利益などを使って市場に出回っているトークンを買い取り、永久に使用できなくすることで、流通量を減らし1トークンあたりの価値を高める働きがあります。
逆に新規発行は市場に出回るトークンが増え、1トークンあたりの価値も希薄化されてしまうので、トークン価格を押し下げる要因になります。
保有するインセンティブ
暗号資産を保有するインセンティブ設計が優れているプロジェクトは、売りに出る暗号資産が少なくなり価格が下がりにくくなります。
例えばバイナンスが発行しているBNBは、バイナンススマートチェーンというブロックチェーン上でトランザクションを通す時の手数料に使用されるだけでなく、BNBを預けてファーミングができたり、BNBで直接買い物ができたりと、様々な使用用途があり保有するインセンティブが高いです。
ゲーム内通貨として使われるブロックチェーンゲームのトークンも保有インセンティブが高いと言えます。
トークンがそのプロジェクトにとって不可欠なものなのか、それとも単なる「資金調達の手段」なのかも重要です。
不可欠なものであればプロジェクトの価値とともにトークン価値も上がりますが、不可欠なものでなければトークン価値は取り消される可能性があります。
プロジェクトの成長性
その暗号資産を発行しているプロジェクトがどのくらい成長するかも将来的な価格形成に影響します。
市場の大きさ
プロジェクトが対象としてる市場がどの程度の大きさなのかを考える必要があります。
多くのIT技術は既存の市場を便利なものに置き換えることでその市場を獲りに行きますが、ブロックチェーン技術でどの市場を代替しようとしているのかを見ます。
代替しようとしている市場が小さいもので成長性も低ければ、そのプロジェクトのトークン価格が上がる可能性も低くなります。
競争環境
大きな市場だったとしても、そんな市場には当然多くの競合が存在し、参入障壁が低ければさらに多くの競合が参入してきます。
そして競合他社が多いということは売り手や買い手は多くの選択肢の中から受けるサービスを選べるので、交渉力が強くなります。
業界内、売り手、買い手、新規参入、代替品の脅威くらいは見ておく必要があります。
プロジェクトの優位性(模倣困難性)
激しい競争環境の中で勝ち残っていくための優位性がプロジェクトにあるかも考慮する必要があります。
資金、技術、人的ネットワーク、顧客、情報、先行者優位など、何がそのプロジェクトの強みで、それがどのくらい模倣が難しいのかを分析します。
プロジェクトの安全性
対象が何であれ、投資する以上リスクは避けられませんが、そのリスクを最小限にしながらリターンを最大限にするのが投資家の仕事です。
セキュリティ評価
いくら個人でセキュリティ対策をしていても、投資している暗号資産を発行しているプロジェクトのブロックチェーンに脆弱性があると、ハッキングに遭って資産を失うリスクがあります。
外部機関にセキュリティの審査を受けているか、その評価はどのようなものかを調べます。
運営コミュニティ
暗号資産の投資では詐欺(スキャム)に遭わないというのも重要になります。
その点でプロジェクトを運営しているコミュニティが信頼しうるものかどうかを見極めなければなりません。
どんな人、企業が運営しているのか、その人たちのバックグラウンドはどのようなものか、を調べます。
まとめ
以上が私の考える暗号資産投資評価の枠組みです。
そして分析するということはこれらを比較をするということです。
・同じプロジェクトを時系列で比較する(縦)
・似たようなプロジェクトをしている他の暗号資産と比較する(横)
それぞれの枠組みを縦横で比較して、もっとも値上がりが期待できる暗号資産に投資するのです。
こうやって考えてみると、暗号資産独特の専門分野を突き詰めて分析するというよりは、株式の投資評価とそう変わらない投資としての枠組みや分析方法になりました。
ただ、株式、コモディティ、暗号資産、それぞれの個別銘柄を全部調べて投資するのは専業でないと難しいので、得意で経験のある投資対象は自力で調べ、分散する他の資産は投資信託的のようなサービスを利用するというのが現実的ではないでしょうか。
ちなみにxWINは暗号資産の投資信託的なサービスです。
自分では分析が難しい暗号資産をポートフォリオに入れているIndex VaultやTrading Vaultに投資することで、その分析や資産配分をプロに任せることができます。
さらに詳しく評価分析したい場合
英語の記事ですが、ブロックチェーンプロジェクトの評価方法について、ブロックチェーンならではの技術的、経済的、システム的な論点を網羅してあります。