『新訳 バブルの歴史~最後に来た者は悪魔の餌食~』では、過去の様々なバブルとその発生から崩壊までの過程が紹介されています。

過去に繰り返されてきた様々なバブルについて学び、そのパターンを知ることで、今起こっている価格の上昇がバブルなのかどうかを推測することができます。

この記事では『新訳 バブルの歴史~最後に来た者は悪魔の餌食~』の中で得た学びの中で、今後の投資に役立ちそうなポイントをピックアップしました。

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著者情報

エドワード・チャンセラー

ケンブリッジ大学とオックスフォード大学で歴史を学び、1990年代初期、投資銀行のラザード・ブラザーズに勤務。フリーライターとして、フィナンシャル・タイムズやエコノミストを中心に執筆。

チューリップバブル

チューリップは射幸性と手軽さで投機にうってつけの対象だった。

単色のチューリップが、花弁に縞模様が付いた最高級品「センペル・アウグストゥス」に化けることがある射幸性。(当時は分かっていなかったが、縞模様は球根に付いたウイルスが原因だったため)

チューリップの球根は広い土地を必要とせず栽培が比較的簡単で、ギルドがなく誰でも参入できる手軽さ。

チューリップバブルの相場水準は、平均年収が200~400ギルダー、小さなタウンハウスが300ギルダーで買える時代に、チューリップの球根が1個2,000~4,000ギルダーの値が付いた。

2,500ギルダーで買える物:小麦27t、ライ麦50t、太った雄牛4頭、ワイン500ℓ、バター2t、チーズ3tなど

1634年頃から始まったチューリップバブルは、1637年2月3日に突然大暴落を始め、翌日にはどんな価格を提示しても球根は売れなくなり、価格がバブル前の水準に戻ったのちバブル期の価格に戻ることは無かった。

チューリップバブルがたどった過程は、のちに金融バブルがたどった過程に似ている。

貴重な球根の価格の高騰から始まり、それが新たな参入者を市場に引き寄せ、単色の普通の球根の投機へとつながった。

後の金融バブルは特定のセクターの株価急騰が引き金となった。

現代で言うと、ビットコインの急騰が引き金となって他の草コインまで急騰した2017年末が一つ目の天井だった。

投機バブルの構造

投機バブルに同じものは無いが、どれも似たような経路をたどる。

①転位

投機バブルは投機への関心を煽る「転位」から始まる。転位は新しい投資対象、または既存の投資対象の収益率の上昇によって発生する。

②ポジティブフィードバック

価格上昇で新しい投資家が参入して熱狂→更に上昇→更に多くの投資家が参入→更に上昇して儲かる。

投資家たちは「陶酔感」を覚えやがて理性を失っていく。

③拡散

バブルの最中には投機は何の脈絡もなかった他の資産クラスにまで拡散していく。

④信用拡大

事業家は投資家の高揚感を利用して新しいテクノロジーを売りにベンチャー企業を立ち上げ、新興企業は投資家の陶酔感を利用して新株を発行し、投資家は得た利益にレバレッジをかける。

信用は拡大し詐欺が横行する。これが金融危機の始まり。

⑤終焉

明るい未来観測が失望に変わり、疑わしい会社が倒産するとブームは勢いを失い価格は暴落。

投機家は自分より愚かなものに売りつけて利益を得ようと考えたが、彼らが自分たちより愚かなものはもういないと気づく。

1980年代の日本のバブル経済

投機による高揚感は傲慢さの現れであることが多い。そのため経済的な権力バランスが一つの国から別の国にシフトする時、巨大な投機ブームが発生する。

オランダ:アムステルダムが貿易の中心となる「経済の奇跡」。→直後にチューリップバブル

アメリカ:世界の主要工業国としての地位をイギリスから奪取。→20世紀初めのニューヨーク株式市場ブーム。

日本:アメリカに追いつけ追い越せでジャパンアズナンバーワンの時代。→1980年代のバブル。

日本のバブル水準

1980年代の終わりには日本の株価は企業収益(財テクからの非持続的利益を含む)の3倍の速さで上昇した。

各セクターの平均PERは、

繊維:103倍
サービス業:112倍
海運業:176倍
漁業・林業:319倍

という高さで、民営化過渡期の日本航空は400倍を超えた。

このような株価が正当化されるはずがないと、欧米投資家は1980年代中ごろから日本株保有を減らしていったが、彼らが去った日本市場では高い株価を正当化するのに都合の良い話がいろいろと語られた。

株価上昇を支えた不動産ブーム

株価上昇の背景には異常な不動産ブームがあり、アナリストの間で「含み資産」の評価が流行。

トレンドが反転するとハイテク企業の業績見通しは無視され、バランスシート上の不動産価値が重視されるようになった。

証券会社による煽り

証券会社は投資家たちに投機の対象となる株式市場の「テーマ」を次から次へと示した

ひときわ目立ったのが会社の不動産の将来性を目玉にした東京湾の再開発。続いてリニアモーターカー、超電導、常温核融合、奇跡のがん治療法など、これまで試みられたことのないテクノロジーが誇大広告された。

市場は止めようがないくらい上昇しているにもかかわらず、平均的な個人客はほとんど儲からなかった。

1989年終盤、日経平均株価は4万円近くまで上昇、その年で27%、過去10年で約500%も上昇し、PERは90倍に達した。配当利回りはわずか0.38%だが、株価は純資産の6倍になった。

当時の野村証券は1995年には8万円に達するだろうと予測した。

モラルハザード

投資家が市場リスクを自らが背負うのではなく、政府が背負ってくれると信じた時に発生する危険性

1980年代の終わりを通じて言われてきたことは、日本の政府は株価を下落させることはなく、日本の銀行や証券会社は「大きすぎて潰せない」ということだった。

数年後にバブルが崩壊すると、これまで信じてきたことは幻影だったことが分かった。

投機市場で「大きすぎて潰せない」という言葉が出るようになれば、それは危機が発生する前触れである。

バブルの歴史

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